戒名に全国一律の定価はありません。戒名への謝礼はお布施の一部で、全日本仏教会は料金として体系化することに反対の立場です。位による違いの一覧と、確認できた調査データ、菩提寺への確かめ方をまとめました。
戒名に全国一律の定価はありません。戒名への謝礼は読経などと同じ「お布施」の一部で、全日本仏教会は、お布施を料金として体系化することは布施(喜捨)の精神に反するという立場を示しています。位(信士・居士・院号など)が上がるほど多く包む慣習があると広く言われますが、位ごとの金額を集計した全国調査は確認できません。確実なのは、菩提寺に「皆さまどのくらい包まれていますか」と直接尋ねることです。
このページは、戒名とお金の関係だけを扱う「値段」のページです。戒名そのものの意味・構成・宗派による違いは戒名とは|位の種類・付け方・宗派による違いで説明しています。
要点は次の4つです。
- 戒名への謝礼はお布施の一部。仏教界の公式な立場では「対価」ではなく喜捨
- 位ごとの金額を集計した全国調査の一次データは確認できない。ネットの料金表は根拠の確認を
- 確認できた実データは「葬儀のお布施全体」の平均22.4万円(2022年調査)。戒名の分だけの金額は公表されていない
- 金額に迷ったら、菩提寺に直接尋ねるのがいちばん確実で、失礼にもあたらない
戒名の値段に「定価」がない理由
戒名を授かるときにお寺へ渡すお金は、独立した「戒名料」という商品の代金ではなく、お布施の一部です。お布施は仏教で布施行(ふせぎょう)と呼ばれる修行のひとつで、サービスへの対価ではなく、喜捨(きしゃ・進んで差し出すもの)とされています。
この点について、仏教界は公式な文書を出しています。財団法人全日本仏教会は2011年、僧侶手配サービスのサイトが「法要料金」として金額を一覧表示したことに対し、「お布施への配慮を欠いた料金体系化を標榜することは、授戒の意義尊厳を損ね、仏教の六波羅蜜の布施行(喜捨)の精神にも反します」として、料金表示の削除を求める要望書を出しました。
つまり「戒名の正規料金がいくらか」という問いには、仏教界の公式な立場からは「定価は存在しない」が答えになります。
出典: 財団法人全日本仏教会「『おぼうさんどっとこむ』掲載の法要料金の価格表示について」(2011年)
位による違い一覧|序列はあるが、金額の決まりはない
戒名の末尾につく位号(いごう)には格の序列があり、上の位ほどお布施を多く包む慣習があると広く言われています。序列を一覧にすると次のとおりです。
| 序列 | 位号 | 一般的な位置づけ |
|---|---|---|
| 高い | 院号つき(院居士・院大姉) | 寺院や社会への貢献が大きい人への称号 |
| ↑ | 居士・大姉 | 信仰が篤い人など |
| ↓ | 信士・信女 | 成人の一般的な位号 |
| ―(別枠) | 童子・童女 | 子どもに |
出典: イオンライフ株式会社「戒名とは?ランク別の値段相場や宗派ごとの付け方、意味を解説」
注意したいのは、この序列と金額の対応表です。ネット上には「信士は◯万円から」といったランク別の料金表が数多くありますが、位ごとの金額を集計した全国調査の一次データは、当サイトで確認できる範囲では公表されていません。根拠となる調査名が書かれていない金額は、その寺院・その地域で通用する保証がない数字として読んでください。
なお、浄土真宗では位号を用いず、法名に院号を付す扱いも考え方が異なります。宗派ごとの違いは戒名とはで説明しています。
確認できた調査データ|お布施全体の平均
戒名の分だけを切り出した統計はありませんが、「葬儀の際に寺院へ渡したお布施」全体の調査データは公表されています。
株式会社鎌倉新書の「第5回 お葬式に関する全国調査」(2022年・喪主経験のある40歳以上の男女1,955人が回答)では、お布施の平均は22.4万円でした。金額帯では「1万円以上10万円未満」が28.4%で最も多く、「10万円以上20万円未満」が23.9%で続きます。平均よりも低い金額帯に回答が集まっており、一部の高額な回答が平均を押し上げている形です。
この22.4万円には読経などへのお布施も含まれ、戒名の分がいくらかという内訳は公表されていません。「戒名料の相場」としてこの数字を使うことはできない点に気をつけてください。
出典: 株式会社鎌倉新書「【第5回】お葬式に関する全国調査(2022年)」
お布施の金額に悩むのは、あなただけではありません。同社の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年・2,000人が回答)では、喪主が困ったことの最多は「お布施の相場・マナーがわからない」(346件)でした。相場が見えない仕組みそのものが、いちばんの困りごとになっています。
出典: 株式会社鎌倉新書「【第7回】お葬式に関する全国調査(2026年)」
金額の確かめ方|3つのルート
定価がなく、統計も戒名単体では存在しない以上、確かめる先は「実際にお願いする相手」です。
- 菩提寺に直接尋ねる。「お布施はどのくらい包めばよいでしょうか」「皆さまどのくらい包まれていますか」と聞く形で失礼にはあたらないとされています
- 葬儀社に地域の傾向を聞く。地元の葬儀を数多く担当しており、その地域・宗派の実情に通じています
- 僧侶手配サービスの定額表示を確認する。菩提寺がない場合の選択肢です。ただし前述のとおり、仏教界には料金体系化への反対の立場があること、菩提寺がある場合は納骨に影響しうることを理解したうえで検討してください
包み方・表書き・渡すタイミングといった作法は、お布施の相場と渡し方にまとめています。
金額に納得できないときは
提示された金額に疑問があるときは、その場で即答せず、「持ち帰って家族と相談します」と一度区切って構いません。やり取りはできるだけ書面やメールで残してください。事業者(葬儀社や僧侶手配サービス)との契約で困ったときは、お住まいの自治体の消費生活センターに相談する方法があります。菩提寺との関係で悩む場合は、親族の年長者に間に入ってもらうと話がこじれにくくなります。
宗派・地域による違い
お布施や戒名の考え方は、宗派だけでなく地域や寺院、家ごとの慣習によって大きく異なります。この記事は一般的な例のご紹介です。実際の金額は、菩提寺や葬儀を担当する寺院・葬儀社に確認するのが確実です。
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よくある質問
ネットにある「戒名料のランク別料金表」は信用していいですか?
位ごとの金額を集計した全国調査の一次データは、確認できる範囲では公表されていません。つまりネット上の「信士なら◯万円」といった料金表の多くは、調査の裏づけが示されていない目安です。参考程度にとどめ、実際の金額は菩提寺か、葬儀社を通じて手配する寺院に直接確認してください。
院号をつけてもらうと高くなるのですか?
院号は位号の中で最も格が高いとされ、上の位ほどお布施を多く包む慣習があると広く言われています。ただし金額の決まりや公的な統計はありません。院号は本来、寺院や社会への貢献をふまえて授けられる称号です。金額だけで選ぶものではないため、希望する場合は菩提寺に率直に相談してください。
お寺に「いくら包めばいいか」と聞くのは失礼ですか?
失礼にはあたらないとされています。聞き方に迷ったら「皆さまどのくらい包まれていますか」と尋ねる形が使いやすいです。金額を示さない寺院もありますが、その場合は親族の年長者や、葬儀を担当する葬儀社に地域の傾向を聞く方法があります。
戒名にお金をかけない選択はできますか?
できます。無宗教の葬儀や、宗教を問わない公営・民営の墓地では、俗名(生前の名前)のままでも支障がないことが多いです。また、僧侶手配サービスの中には戒名授与を定額で示しているものもあります。ただし菩提寺がある場合、菩提寺以外で授かった戒名では納骨を断られることがあるため、先に菩提寺へ相談してください。
生前に戒名を授かると安くなりますか?
「生前戒名は安い」と紹介されることがありますが、金額を比較した調査データは確認できません。生前に授かる利点は、金額よりも、本来の形で仏弟子となれること、家族が葬儀の場で慌てずに済むことにあります。費用が気になる場合も、まず菩提寺に生前の相談として持ちかけるのが確実です。
出典