お布施は読経や戒名への対価ではなく、寺院へのお礼として渡すものとされ、決まった金額がありません。出典つきの調査データをもとに、金額の考え方と確かめ方、渡し方とタイミングをまとめました。封筒の書き方は専用ページへ。
お布施は、読経や戒名の「料金」ではなく、寺院への感謝を包んで渡すお礼です。定価がないため、金額は地域や寺院との関係によって幅があります。迷ったときは、寺院に「皆さまどのくらい包まれていますか」と直接尋ねて差し支えありません。袋は白無地の封筒、表書きは「御布施」、渡すときはお盆か袱紗に載せるのが基本の形です。
要点は次の5つです。
- お布施は対価ではなくお礼。決まった金額はない
- 金額に迷ったら、寺院か親族の年長者に確認してよい
- 袋は白無地の封筒か奉書紙。表書きは「御布施」を普通の黒い墨で
- 手渡しは避け、切手盆(小さなお盆)か袱紗に載せて渡す
- 僧侶に出向いてもらう場合は「御車代」、会食を辞退された場合は「御膳料」を別に包む慣習がある
お布施とは何か
お布施は、葬儀や法要で読経や戒名を授けてもらった寺院に対して、感謝の気持ちとして金銭を包んで渡すものです。
ここで大切なのは、お布施が「サービスの対価」ではないという位置づけです。仏教界の連合団体である全日本仏教会は、お布施の価格を一覧表示した葬儀情報サイトに対して「喜捨の精神に反する」として削除を要請しており(2011年)、お布施はあくまで仏教的行為の一環であるという立場を示しています。
つまり「読経〇分でいくら」という計算をするものではなく、寺院という場を支えるための寄進、というのが本来の考え方です。相場という言葉を使う場合も、この前提を頭に置いておくと、寺院とのやり取りで戸惑いにくくなります。
宗派・地域による違い
お布施の考え方や金額の目安は、宗派・地域・寺院との関係によって大きく異なります。この記事は一般的な例と公開されている調査データのご紹介です。迷ったときは、菩提寺や葬儀社に確認するのが確実です。
調査データで見るお布施の金額
公開されている全国調査として、株式会社鎌倉新書の「第5回お葬式に関する全国調査」(2022年・喪主経験者1,955名対象)があります。この調査では、葬儀の際に寺院へ渡したお布施(読経や戒名のお礼を含む)の平均は22.4万円でした。
ただし、この数字をそのまま「包むべき金額」と受け取らないでください。同じ調査で金額の分布を見ると、最も多い回答は「1万円以上10万円未満」で28.4%、次いで「10万円以上20万円未満」が23.9%です。平均額は一部の高額な回答に引き上げられやすいため、実際には平均より少ない金額を包んだ人が相当数いることが分布から読み取れます。
出典: 株式会社鎌倉新書「第5回お葬式に関する全国調査」(2022年)
なお、この数字は葬儀のときのお布施です。四十九日や一周忌などの法要のお布施は、これより小さい規模で包むのが通例とされていますが、法要のお布施だけを集計した信頼できる公開調査は、現時点で確認できていません。そのため当サイトでは、法要のお布施の具体的な金額は挙げていません。
法要のお布施はどう決める?
金額の出どころがない以上、確認先を持つことが一番の近道です。次の順で確認するのが現実的です。
- 菩提寺に直接尋ねる。「皆さまどのくらい包まれていますか」という聞き方なら、目安を教えてもらえることが多いです
- 親族の年長者に聞く。同じ寺院と付き合ってきた家族なら、過去に包んだ金額がそのまま参考になります
- 葬儀社や法要会館に聞く。地域の相場感を把握しています
「お気持ちで」と返されて困ったら、2と3に戻って確認すれば大丈夫です。金額を聞くこと自体は失礼にあたらないとされています。
四十九日や一周忌の日付がまだ固まっていない場合は、法要日程計算機で先に日程を確認しておくと、寺院への相談がスムーズです。一周忌の準備全体の流れは一周忌の準備と当日の流れに、初盆のお布施の考え方は初盆・お盆のお布施にまとめています。
袋と表書きは、ここだけ押さえれば足ります
袋は白無地の封筒(郵便番号欄のない一重のもの)か、「御布施」と印刷された市販の封筒が広く使われます。より丁寧にするなら奉書紙で包む形もあります。水引は不要とされることが多い一方、地域によっては黒白や黄白をかける慣習も残っています。
表面の上段に「御布施」、下段に施主の姓(〇〇家)かフルネームを書きます。墨は香典と違って薄墨にせず、濃い黒を使います。中に入れるお札は新札で問題ありません。
袋の選び分け、中袋の書き方、中袋がないときの扱い、お札の向き、奉書紙の折り方までの手順はお布施の書き方|封筒の表書き・中袋・お札の入れ方にまとめました。封筒を前に筆を持っている段階なら、そちらから読んでください。
お布施と香典の作法対比表
墨の色とお札の扱いは、香典とお布施で逆になります。書き始める前に、4か所を並べて確認してください。
| 項目 | お布施 | 香典 |
|---|---|---|
| 表書き | 上段に「御布施」または「お布施」、下段に施主の姓(「〇〇家」やフルネームでも可) | 四十九日より前は「御霊前」、四十九日以降は「御仏前」(浄土真宗は葬儀の時点から「御仏前」) |
| 墨の色 | 普通の黒い墨で書く | 薄墨で書くのが正式とされる(近年は黒インクでも差し支えないとされる) |
| お札 | 新札で問題ないとされる | 新札は避ける(事前に用意していたと受け取られるため) |
| 水引 | 不要とされることが多い(地域によって黒白・黄白をかける慣習もある) | 黒白または双銀の結び切りが一般的 |
香典側の出典: 全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)「香典袋とは」/一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会「お葬式のマナー」。お布施側はこのページで説明している一般的な慣習で、地域や寺院、宗派によって異なります。迷ったときは菩提寺や葬儀社に確認してください。
香典側の詳しい手順は別のページにまとめています。表書きと名前の書き方は香典の書き方、袋と水引の選び方は香典袋の選び方、御霊前と御仏前の切り替わりは御霊前と御仏前の違いをご覧ください。
渡し方とタイミング
お布施は手渡しを避け、次のどちらかの方法で渡します。
- 切手盆(きってぼん・小さな黒いお盆)に載せて、文字の向きを僧侶側に回して差し出す
- 袱紗(ふくさ)から取り出し、袱紗をたたんで台の代わりにして載せる
渡すタイミングは、法要が始まる前の挨拶のときか、法要後にお礼を伝えるときが一般的です。袱紗の色の選び方や包み方は袱紗とはで図解しています。
お車代・御膳料もあわせて確認
お布施とは別に、次の2つを包む慣習があります。
- 御車代(おくるまだい): 僧侶に自宅や会場まで出向いてもらった場合の交通費として包む。施主が送迎する場合や寺院で法要を行う場合は不要
- 御膳料(おぜんりょう): 法要後の会食を僧侶が辞退された場合に、食事の代わりとして包む
いずれも白無地の封筒に表書きをして、お布施と一緒に渡すのが一般的です。金額は地域差が大きいため、お布施と同様に寺院や親族への確認をおすすめします。
なお、永代供養を検討している方は、永代供養料はお布施と異なり寺院や霊園が料金として提示するものです。違いは永代供養とはで説明しています。
よくある質問
お布施に決まった金額はありますか?
ありません。お布施は読経や戒名への対価ではなく、寺院へのお礼・寄進という位置づけのため、定価が存在しません。金額は地域や寺院との関係によって幅があります。迷ったら寺院に直接尋ねるか、親族の年長者に確認するのが確実です。
お布施の金額を寺院に直接聞いても失礼になりませんか?
失礼にはあたらないとされています。「皆さまどのくらい包まれていますか」という聞き方であれば、目安を答えてもらえることが多いです。お布施の位置づけ上「お気持ちで」と返される場合もありますが、その際は親族や地域の年長者に確認する方法があります。
お布施はいつ渡すのがよいですか?
法要が始まる前の挨拶のときか、法要後にお礼を伝えるときが一般的とされています。手渡しは避け、切手盆(小さな黒いお盆)に載せるか、袱紗から取り出して袱紗をたたんだ上に載せて差し出します。文字の向きは僧侶側から読める向きにします。
お布施のほかに御車代・御膳料も必要ですか?
場面によります。僧侶に自宅や会場まで出向いてもらった場合は交通費として御車代を、法要後の会食を僧侶が辞退された場合は食事の代わりとして御膳料を、それぞれ別の白封筒に包む慣習があります。施主が送迎する場合や寺院で法要を行う場合、御車代は不要とされています。
お布施の封筒の書き方はどうすればよいですか?
表面の上段に「御布施」、下段に施主の姓かフルネームを、薄墨にせず濃い黒の墨で書きます。中袋があるタイプは表に金額、裏の左下に住所と氏名を書きます。袋の選び方・中袋・お札の向きまでの詳しい手順は「お布施の書き方|封筒の表書き・中袋・お札の入れ方」にまとめています。
出典